キャッシュレス決済 今後の課題

キャッシュレス消費者還元事業 の終了が間近に迫り、経済産業省は今頃になって「キャッシュレス決済普及のための手数料と金融システムの見直し」について議論を始め、キャッシュレス決済普及の課題として決済手数料 を取り上げるメディアが増えた。

キャッシュレス決済普及は手数料が障壁、システム見直しを=再生相

今月のはじめには丸亀製麺が QRコード決済を一時的に終了することが話題になり、PayPay を始めとする QRコード決済 の取り扱いを終了する飲食店や小売店が増えているらしい。

利用者も加盟店も?じわじわと広がる「スマホ決済離れ」の予兆

一方で折からの新型コロナウイルスの影響により 紙幣を触りたくないという心理から キャッシュレス決済は増加傾向にあるという。

電子マネーとコード決済が急伸。新型コロナでお客様も“接触低減”重視?

QRコード決済

2019年10月に実施された インフキュリオンデジタル の「QR コード決済各アプリの利用率」によると Paypay が 63.8% と圧倒的に多く、次いで LINE Pay (29.6%) , 楽天ペイ (28.8%) と続いており、2019年3月の調査結果と比較すると QRコード決済の利用率は3倍になっている。

増税後のQRコード決済利用率が3倍に拡大。最も利用されているアプリはPayPay

乱立するスマホ決済の対策として キャッシュレス推進協議会が「 JPQR 」という QRコード決済の統一仕様を策定し Paypay も参加が決まっているが、独自営業で取扱店舗を増やしてきた Paypayは 手数料で 差を付ける策に出た。

統一QR、足並み乱れ PayPayが手数料で独自路線

クレジットカードや電子マネーと比較して手数料が安い QRコード決済の中でも、Paypay は「手数料無料」で取扱店舗を拡大しつつ ポイントのバラマキでユーザーを増やしてきたので、いまさら他社と肩を並べる必要などもなく、Paypay 独自のQRコードと JPQR の手数料に差を付けることで、JPQR の取扱店が Paypay 独自のQRコード に流れる可能性もある。

通貨に求められるもの

冷戦時代真っ只中に「国際的に価値が普遍なもの」として「金」が注目され、1978年に旧ソビエトがアフガニスタンに侵攻した際に金価格が高騰、1980年1月には 1グラム 6,495円 の値を付けた。
その後も 戦争 や 経済危機 に見舞われる度に「有事の金」としてゴールドが買われる傾向にあり、今年5月には 1グラム 6,500円 を突破して40年ぶりに高値を更新した。

田中貴金属 金価格推移

有事の際に 自国や他国の通貨ではなく「金」が買われるのは 貨幣よりも資産として安全だからで、ハイパーインフレに見舞われ 2019 年の物価上昇率 が 年率 19,906.02 % のベネゼエラでは すでに自国の通貨は流通していない。

通貨に何よりも求められる二大要素は「安定性」と「普及率」。
数ヶ月後に価値が半減しているような通貨は怖くて換金できないし、そもそも使えない通貨では話にならない。

キャッシュレス決済と一括にされているが、キャッシュレス決済の中で「安定性」と「普及率」が最も高いのはクレジットカード。
クレジットカードでも JCB / AMEX は手数料率が高いため取り扱いがないところもあるので、VISA / MASTER 系が最も使えるキャッシュレス決済になる。

現在 クレジットカードの認証は 専用端末 を使用してオンラインで行われているが、システム障害などで端末が使えない場合でも 電話の自動音声で承認が可能になっているため、モデムやルーターなど通信機器に不具合が発生しても 電話さえ使えれば インプリンターで決済ができる。

一方、Paypay を始めとする スマホで利用する QRコード決済 は、ユーザーのスマホが使用できる状態で、モバイルネットワークか Wi-Fi に接続していることが前提で、更に店舗側もオンライン環境でなければ決済ができない。

バッテリー切れ、通信エラー、アプリの不具合など、レジ前でスマホを振りかざしている人も少なくない。

キャッシュレス決済の課題

キャッシュレス消費者還元事業は ポイントのバラマキで消費者を釣り、釣られた消費者を餌に販売店への導入を促す 施策で、利用者の多くは ポイント を獲得するために使用しているため、ポイント還元率が直接 使用するメリットの大きさになっている感がある。

新型コロナウイルスの影響で 現金のやり取りを嫌う風潮が追い風になっているものの、QRコード決済は QRコードをスキャンするタイプも 店舗側で読み込むタイプも 意外と面倒だったり、iD や Edy , Suica , Waon などの 非接触タイプの電子マネーは 使いやすいが 使用店舗が限られていたりと、わずかなことだが 現金の代わりとしては まだまだ使いづらい面がある。

決済手数料

諸外国と比較しても日本の決済手数料は割高だが、その一因は「日本人が借金を嫌うから」で、いわゆる リボ払い をカード利用者が多用すれば カード会社は 利息で大きな収益を上げることができるので 決済手数料も下げやすいが、カード利用者の多くは 一括払い を利用するため カード会社は ユーザーから 年会費 しか徴収できず、しかも「ポイント」も還元しているので その皺寄せを取扱店舗が引き受けるというビジネスモデルになっている。

飲食店の場合 一般的に 利益は 売上の 10 %程度で、内訳は 原価率 30% , 人件費率 30% , 家賃比率 10% , 光熱費率 8% , その他(通信費・消耗品費)12% が目安とされており、利益率は決して高くない中、クレジットカードの決済手数料は 売上の 5% 前後。

キャッシュレス決済が現金決済を上回った中小事業者、3割近くに

キャッシュレス消費者還元事業により 申請して「中小・小規模事業者」として認定されると 2019年10月~2020年6月までの期間は、キャッシュレス決済の手数料(3.25%以下)の三分の一の補助が受けられ、実質的に 2.17% 以下でクレジットカードを使用できていたが、期間終了後は 1~ 3% 程度 値上がりする。

売上高が変わらず クレジットカード決済の利用比率が倍になると、 率にして20%以上 売上高を増やさないと 元の利益高を確保できない計算になる。
更に コロナ禍で客数が減少、ソーシャルディスタンスで 店内の客数も制限されるため、もともと現金の取り扱いが多い飲食店は 非常に厳しい状況に陥ってしまう。

利便性と安全性

キャッシュレス決済の最も大きな課題は「使用すると得する」という ポイントありきのシステム。
普及させるためのエサだとしても、ポイント原資を取扱店舗が負担している以上、現金の代わりになるまで普及させることは難しい。

手数料の高いクレジットカードや電子マネー、乱立するQRコード決済などを含めて「キャッシュレス決済」として普及させるのであれば、現金と同等のインフラにする必要があり、現状のポイントで利用を促すのには限界がある。
裏を返せば 現状では ポイントで釣らなければならないほど キャッシュレス決済に利便性がないということで、現金のように「どこでも いつでも 使える環境」には 程遠い。

停電や通信障害のほか システムダウン など キャッシュレス決済ならではの問題もあり、最近ではスーパーのレジでアルバイトがクレジットカードの情報を記憶して不正利用するなどの事件も発生している。

今後 キャッシュレス決済の普及を加速させるには、 VISA / Master と JCB の2大ブランドで取扱扱いが可能なクレジットカードのように、QRコード決済 だけでなく 電子マネーも 統一ブランドを確立し、どこのキャッシュレス決済サービスを使っても利用できる環境整備と 停電やシステムダウンの際の対策、キャッシュレス決済 取扱店舗の経費負担軽減が急務で、今後は 脱ポイントが大きな課題になる。

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