色褪せた革の補色

染料を使用していない タンニン鞣しの ヌメ革は 使用しているうちに紫外線によって 繊維に浸透しているタンニンが変色して茶褐色になっていくが、革に着色してある多くの製品は使用や保管状況によって 色褪せ や 変色 が発生する。

上図 では 上下で使用前・使用後のような感じに色分けされているが、退色は太陽光や蛍光灯の光に長期間 晒されて起こるので、いわゆる 片面焼けになることが多い。

カラーによっては日焼けにより変色するケースもある。

退色や変色の最たる原因は紫外線をたっぷりと含んでいる「直射日光」。
一昔前までショップで使用されていた ダイクロハロゲンのスポットライトも紫外線を含んでいるため 直接 日焼けの原因になっていたが、現在使用されている スポットライト用の LED ダイクロハロゲン は紫外線を含んでいないものが多く、紫外線による退色は起こらない。

染料と顔料の違い

皮革製品の染色には「染料」と「顔料」があり、大きな違いは「水や油に溶解するか否か」で、溶解するものは「染料」、溶解しないものが「顔料」と呼ばれている。

歴史が古いのは 顔料で、紀元前 1 万 5000年 ほどの洞窟壁画には、赤土, 黄土のような 土 や 貝殻を焼いた粉(胡粉), 黒鉛などの天然鉱物を原料とした最古の顔料が使用されており、儀式や呪術などでフェイスペイントに使用されていたことから「顔料」と呼ばれるようになったとか。

一方の染料は エジプトのピラミッドで発見された紀元前 4000年頃の藍染された麻布が古く、1600年頃の 古代フェニキア の特産だった ミュレックス という巻貝から取れる貴重な紫色の染料 ロイヤルパープルとも呼ばれる「貝紫」などが有名。

顔料は水に溶けず浸透することがないため 一般的には接着剤で色素を固着させているのに対し、染料は水溶性なので 色素が繊維組織の内部に浸透しており、顔料はペンキ、染料は食紅など食品用の着色料をイメージすると分かりやすい。

顔料は色素で表面が覆われるため 耐光堅牢性や耐湿潤堅牢性が高く 均一的で美しい仕上がりになる反面 剥がれやすいというデメリットがあり、染料は 下地に浸透するため 素材の風合いを活かすことができるが、水溶性なので水に浸かると 色落ち や 色ムラ になる可能性がある。

皮革製品の多くは 短時間で染色できて実用的な 顔料が使用されており、染料は 「銀付き」という 皮膚の表皮(銀面)を自然のまま活かした 素材に使用されることが多い。

革の経年変化(エイジング)は「タンニン鞣し + 染料」でないと楽しめないが、「銀付き」「タンニン鞣し」「染料」とコストと時間がかかる製品になるため、顔料を使用した製品と比較すると割高で 「タンニン鞣し + 染料 = 高級品」「クロム鞣し + 顔料 = 安物 」といった 誤ったイメージを持っている人もいる。

「クロム鞣し + 顔料」の製品が多いのは、 コスト面も含め「タンニン鞣し + 染料」の製品に比べて 堅牢性があり「買ったときの美しさ」を維持でき、メンテナンスも行いやすいなどの メリットがあるからで、高級・低級 といった括りで分けられるものではなかったりする。

ケア用品

 

補色クリームのように着色することはできないものの、色付きの靴クリームはカラーに多少の違いがあっても自然な感じに仕上げることができる。

カラー補色クリーム は「顔料」なので 幅広い用途で使用でき、クリームを混ぜたり レザーローションで薄めて使用できるが、補色クリームを使用すると「色が乗る」ので  ライトカラーなどの製品に使用すると色ムラの原因になりやすい。
また、アリニン染め(染料)や ヌメ革 , ゴートスキン(山羊革) , シープスキン(羊革)など 銀付き革の製品では風合いを損ねる可能性が高いので 使用は避けたほうが無難。

補色クリームを除去する場合は 有機溶剤を含んでいるリムーバーを使用するが、補色クリームを塗った直後であれば除去できるが、補色クリームが乾燥してカラーが定着すると除去は困難なため注意が必要。

カラー補色クリームでの着色

ペンキで塗装する際「 似た色 」で部分的に上塗りすると、上塗りした部分が予想外に目立って 残念な感じになってしまった事がある人も少なくないはず。
黒といっても クリアブラック もあれば マットブラック もあり「黒」に見えるカラーだけでも非常に多くの種類がある。

補色クリームは混ぜることで色の調整ができるとは言え、目にしている色と同じ色を作り出すのは非常に難しく、色が淡くなるほど 補色クリームを塗布した際に 色の違いがはっきりと現れるので、靴のコバ や 鞄の角など  あまり目立たない箇所が 部分的に剥げた場合の処置には良いのだが、日焼けなどで退色している部分に使用するのは非常にリスキー。

時間を巻き戻したように きれいになると思って 補色クリームを使うと 結構な割合で痛い目を見ることになる。

部分的に色を乗せる場合でも 全体を塗り直す心構えが必要で、使用するカラーや塗り具合によっては元の雰囲気を損ねてしまう可能性も大いにある。

補色クリームを塗る前に ブラシで表面のホコリ等を取り除く。

手垢などで汚れている場合は クリーナーを使用。

クリーナーを使用した場合は完全に乾燥してから作業を行う。

部分的にクリームを塗る際は直接 指に付けて塗り込むのが手っ取り早い。
布を使用する場合は 毛羽 がつかないような素材にする。

部分的に剥げているような箇所にクリームを塗って 違和感なく補修できれば ラッキーくらいのつもりで作業をしたほうが良いかも。

製品のカラーが黒であれば上手くいく可能性は高くなるが、黒以外のカラーは 残念な感じになりやすい。

製品全体に着色する際は レザーローションで クリームを薄めておく。

ペンキ塗と同じく 基本は「重ね塗り」になるので  薄めにするのがオススメ。

クリームを塗る際は キッチンスポンジなどスポンジがオススメ。

補色クリームは 10分ほどで乾燥するが レザーローションで薄めているので 30分ほど時間を置いてから 重ね塗りをする。

重ね塗りの回数を増やすほど下地が消えるので「塗り」の仕上がりは良くなるが、革の素材感は失われていくので、時間はかかるが一度に厚塗せず 薄塗りと乾燥を繰り返して様子を見るほうが失敗は少ない。

刷毛を使用すると刷毛目ができ、布の場合は毛羽が付着するので 仕上がりが良くない。

重ね塗りを3回した状態。
色がしっかりと乗っているところを乗っていない部分があるので 色ムラが生じている。

剥げていた箇所は目立たなくなった。

色ムラになっている部分を意識しながら 後 2 ~ 3 回ほど重ね塗りをすれば 完成度が上がる気もするが、画像で見るよりも現物の色ムラは分かりにくいので ひとまず完成。

元のカラーと比較すると しっかりと色が乗っているのが分かる。

補色クリームを全体に使用すると 製品が「別物」になってしまうだけでなく、製品が大きくなるほど塗装の難易度が上がり、リムーバーで落とせるといってもリミットは塗装してから10分以内で、時間内にリムーバーを使用しても 完全には落としきれない場合が多いため、安易な使用はオススメしない。

靴クリームでの着色

補色クリームに比べてリスクが少なく手軽なのが靴クリームを使用した補色。
リスクが少ない反面 着色効果も薄れるが、多少 カラーが違っても色ムラになりにくく 仕上がりも自然。

使用するのは 蜜蝋(ビーズワックス)などをベースにした「乳化性の靴クリーム」で、製品と同色か やや薄い色を使用し 製品よりも濃い色の使用は避ける。

退色した部分だけでなく製品全体に使用し、退色した箇所は厚塗せずに 重ね塗りを行う。

 

補色クリームと同様に ブラシでホコリを除去。

必要に応じてクリーナーを使用する。

アプライブラシを使用して 靴クリームを塗布していく。

ポリッシャーブラシでクリームを全体に擦り込む感じでブラッシングしていく。

余分なクリームを取り除く感じで全体に磨いていく。

退色した部分に重ね塗りをしていくと 元の風合いを損なうことなく補色できる。

補色の効果は 補色クリームと比べると低いので、変色した箇所などでは 少しマシになる程度だが、ネイビーなど色合わせが難しいカラーでも 違和感のない仕上がりになる。

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